難しい芸術

消費税と芸術はどちらが簡単な話か(4)
【アートの本格解説】

13 日本の平成大不況と貧困化の正体

平成時代の初期は好景気で、途中からなぜ不況で貧困化したかは、日本人の大半が誤解しています。少子化のせいで物が売れなくなったと思っている人が、めちゃくちゃ多いのです。

子どもが減れば、それだけ消費も減るのだ。不況の犯人は、結婚せず子どもを持たない若者だ。若者の思想が突然変異して、欲望ゼロの草食系に変わったから経済が傾いたのだ・・・と。

評論家も芸能タレントも、報道アナウンサーも、番組に意見する一般市民も同様に口をそろえます。そうした若者犯人説が完全に間違っている、ひとつの証拠はゴルフです。

平成の早い段に、ゴルフ用品は売れなくなりました。ゴルフは少年少女のスポーツでなく、おっさんの世界です。

50歳前後の男がゴルフをバタバタやめた理由が、児童の減少なわけはありません。そうではなく、バブルがはじけて起きた所得減でした。デフレ不況で起きた賃下げが理由です。ゴルフはお金持ちのスポーツですから。

少子化の急進は、デフレ不況の所得減で結婚できない男女が増えたからです。婚姻はぜいたく品。

「子どもが減るから何もできない」と語り出す人は、原因と結果があべこべです。「まずは少子化を解決してからだ」の主張は、結果を変更して原因を動かそうとしています。

昭和になかった不吉な変化は、どれもデフレに起因します。本が売れない原因と、路上テロが起きる原因は、同じ原因です。ブラック企業の大流行と、シェアハウスの流行も。料亭の食材使い回しも、省庁の障がい者雇用不正も、新幹線の台車割れも、地方都市の洪水も。8つの原因は同一。

日本に山積みの問題はなく、ひとつの問題だけがあります。

その平成デフレ不況はなぜ起きたのか。

1992年がバブル景気のピークで、中央政府の判断で不景気にかじを切りました。1995年秋の『Windows95』のOAブームで持ち直した日本の景気が、直後のある政策で墜落しました。それ以来デフレ不況が22年続きます。

それが1997年4月の消費税増税でした。3パーセントから5パーセントに上げて、次の現象が起きました。(1)書店がつぶれた。(2)CD店がつぶれた。(3)パソコン店がつぶれた。(4)ファッション店がつぶれた。(5)商店街がシャッター通りに変わった。

5つの原因は、ネットの発達だとする誤解が非常に多いのです。特に(1)(2)で。

本やCDショップがバタバタつぶれたのは1998年です。その時日本の家庭にはパソコンはなく、遅れを嘆く声がワーワー出ていました。ネット先進の韓国にくらべ、日本のお粗末さは何だと。

だから2001年にインターネット博覧会を開いたではありませんか。

日本国民にパソコンとモデムを用意させ、インターネットに入門させる目的で。インパクを覚えていない方が多い理由は、日本のネット人口が21世紀の初日にわずかだったからです。

ネットが閑古鳥の頃に、皆がネット文書を読み、音楽をダウンロードしたから、街の書店とCD店がつぶれたなどはあり得ません。本当の順序は、1997年の消費税増税で国民が貧しくなり、本代とCD代を節約した不買で店がつぶれるラッシュが起きました。

その頃の流行語は、能力給とリストラでした。給与報酬削減と解雇です。自殺激増3万人超の年。

バブル後の低調に消費税がとどめを刺し、全国民がいっせいに物を買わなくなり、不況になったのです。出費の削減。徹底した節約。若者が草食化し、小粒に育った原因が、消費税でした。

誤解釈の指摘が、ひとつ増えました。

「日本が縮んだ原因は少子化でなく、消費税増税である」。

14 消費税は上げて下げてが正しい使い方

消費税への誤解はすさまじいの一言で、芸術の方が3.25倍は理解されているほどです。消費税について、著者は次の表現をよく使います。

・・・インフレは経済の夏。デフレは冬。夏の暑さで熱中症になる。冬の寒さでしもやけになる。両方に即効性がある消費税。熱中症なら冷やす。それが増税。しもやけなら温める。それが減税。インフレだと増税し、デフレだと減税する・・・

消費税は、上げ下げして景気を調節する弁です。0パーセントから始め、景気が過熱すれば3パー、5パーと上げ、超インフレが近いなら、40パー、100パーと上げて、理論上1兆パーも可能。

逆に景気が冷えれば2パー、0パーと下げます。それでもなお景気が落ちるなら、マイナス4パー、マイナス9パーと下げます。

マイナスの消費税だと、税抜き100円なら税込み96円や91円の割引セールになります。差額を国から店へ返します。その財源は貨幣プリンターの信用創造です。その時は必ずデフレだから、お金を追加出力して適度なインフレへ押し上げる道理に合います。そうしない者こそ怪しい。

消費税はマイナス無限大からプラス無限大へ、上にも下にも対等に振動させて、インフレ率を2から4パーセントに保つ調整術です。

上げ下げが車のスピードと似ています。車もまた、決められたスピードにちょいプラスで走ります。スピードを上げて上げて、上げる一方の使用法とは違うのが普通です(ドラッグレースを除く)。

3パーセントから5、8、10と上げて25パーセントを最終ゴールとする、そんなドラッグな思想は間違いです。上げたり下げたりが正解で、現にアメリカの各州はやっています。

日本にアメリカ型の消費税が向くのは、北欧にくらべ人口がケタ違いに多い内需国だからです。ここまで皆さん、ついてこられましたか。

ところで、日本人は「総額一定論」が好きです。貯水池の水や炊飯器のごはんと同様に、決まった量のお金を皆で分ける誤った発想です。「お金のプール論」「金属主義」の表現もそれです。

この誤解釈には全体のパイを大きくして、皆の分け前を増やす発想がありません。減税して経済成長すれば、税率が低くても税収が逆に増えるという、抽象的で芸術的な計算が抜けています。

子育て支援の代わりに大学補助金をカットし、高校を無償にした犠牲で介護料を上げてと、ゼロサムゲームやシーソーゲームの共食いに終始して。A業界を助け、B業界を切り捨てる。縮み思考。

平成日本は、この共食いパニックの時代でした。他人を敵とにらみ、自分が得するために他人に損させる生き方が流行りました。ギャンブル脳のこの人権侵害を、ブラックと呼びました。

総額一定のお金を奪い合う、具象的な感覚から出られない日本人の姿。

予算、歳費、貨幣発行量、マネタリーベース、マネーストック、GDP、買う気、商品生産量、人口など各パラメーターはどれも固定せず、全てを計画的に増減できます。「右肩上がりは終わり、日本経済はもう伸びない」という声は、何かを固定した特殊な思想です。

固定した数量は、子どもの人口ではありませんか。神まかせのヤケクソな前途放棄か、コウノトリの迷信か。それとて、若い男女の所得が上がるほど、婚姻率が上がり子どもが増えるだけの話です。

15 不幸を引き寄せる日本人の謎

最近、消費税の廃止案が出ました。せめて5パーセントに戻そうという案も出ています。

5パーセント案には「本来必要だが今は下げろ」と言う財源論者と、「本来不要だが下げすぎるな」と言う物価安定論者がいます。著者の案は「本来不要だが3パーセント残そう」です。

1989年の消費税導入時は3パーセントでした。代わりに元々5パーや30パーなど高い物品税を廃止して、高額商品が値下がりし大売れする成功でした。3ナンバー車の「シーマ現象」など、高級車や高級家電や高級カメラが飛ぶように売れた内需が、技術立国の基盤をつくりました。

後に中国や台湾や韓国にヘッドハントされ流出した生産技術は、この頃につちかったものでした。

だから3パーセントの数字は、消費マインドを高めるおまじないです。

つまり著者は経済を、自然現象や貨幣現象や神の手ではなく、人間の心のはたらきが左右する現象だと考えます。ムードの群集心理。気持ちで動く、心理学や脳科学のカテゴリーです。

芸術創造も経済と似た複雑系で、作品をそう作った理由が分析できず、偶然も含みます。心の美しい人が美しい絵をかく必然さえなく、数式化できません。お役所仕事に不向きな分野です。

庶民に心があるから、日本が景気回復できない面も考えられます。

苦しみに慣れると、さらに苦しもう的な気質が日本にあります。負担に生きがいを得る、苦行の思想です。スポ根ふうの精神主義。DVに無抵抗な日本的な何か。そこを誰かに利用される。

消費税廃止の公約を唱えた政党を、ポピュリズムだと皆が思ったのはなぜか。

国税財源論への信心もあったでしょう。が根底に、身を切る改革にいそしみ、皆で痛みを分かち合う逆境願望があった気がします。しもやけの手足を温める近道を嫌う、宗教的思想信条みたいなもの。もっと冷やそうとする。

何しろ物が売れなくて悩む中、もっと売れなくなる消費税増税への賛成が変に多かった。虚無主義や奴隷根性とは違う、民族特有のマゾヒスティックな自虐性というか、自己犠牲や自殺との親和性が、デフレ貧困に甘んじる苦境をあえて選ばせた疑いです。

国税財源論の勘違いとは別に、「日本だけ27年も下がるのは変だ」と思わない奇妙さです。

知識空白と自虐DNAの相乗効果で、悪い結果へ自ら向かう集団自決みたいに。

これは太平洋戦争(大東亜戦争)で、とことん身を切って痛みを極大化させた一連の行動と、多少は関係があると推測できます。要は、愛する人を失って初めて目が覚めるタイプです。

16 一問一答

――デフレだと税収が減るから、消費税を増税すべきだろ?

デフレでは消費を増やす目的で、税率を逆に下げます。

――ならば、予算不足をどう埋める?

政府が国債を発行して円を新造し、政府が買い物します。

――ならば、国の借金が増えるが?

借金は政府赤字を指し、国民に与えたお金の別名です。

――もし返せなくなると、破綻するだろ?

自国通貨の国債なので、円の新造ですぐ返せます。

――ならば、なぜ今すぐ返さない?

自国通貨の政府負債は、毎年増やすべきものだからです。

――あえて減らせば何が起きる?

政府負債は貨幣発行額を意味し、赤字減らしはお金の削除です。

――しかし貨幣発行を無限に増やせば、ハイパーインフレになるぞ?

消費税を無限に増やせば、ハイパーデフレに落とせます。

――お金を国民に、直接ばらまくのは何が悪いのか?

仕事が増えずに、お金だけ増えても貯金に回るだけです。

――仕事が増えても、企業の内部留保に化けるだろ?

昭和と同様に消費税をやめて、所得税と法人税を元どおり上げます。

――既得権者が妨害するだろ?

その忖度で日本は経済縮小し、国力低下中です。

――税をとる分量の目安はどこにある?

物価高騰しない範囲で税率が軽いほど、経済が伸びて税額が増えます。

――それをやっている国はどこだ?

日本以外の諸外国です。

――日本は外国と何が違う?

逆走しています。

 

【ビジュアル資料】
(1)各国の最低賃金 (あの国と日本はどちらが高い?)
(2)各国の賃金の伸び (右肩下がりの国は世界にいくつ?)
(3)各国の企業の資産ランキング (日本企業は薄オレンジ色)
(4)各国の経済力と将来性 (上ほど強国、右ほど伸び盛り)
(5)消費税増税とGDP (97年と14年の増税に注目)
(6)無限に借金しても破綻しない日本 (お墨付きは誰の一言?)
(7)イングランド銀行の信用創造正論

(つづく)(2019年9月6日)