平成時代の初期は好景気で、途中からなぜ不況で貧困化したかは、日本人の大半が誤解しています。少子化のせいで物が売れなくなったと思っている人が、めちゃくちゃ多いのです。
「子どもが減れば、消費も減る」「不況の犯人は、結婚せず子どもを持たない若者だ」「若者の思想が突然変異して、欲望ゼロの草食系に変わったから経済が傾いた」と。
評論家も芸能タレントも、報道アナウンサーも、番組に意見する一般市民も口をそろえます。そうした若者犯人説が完全に間違っている証拠はゴルフです。
平成の早い段に、ゴルフ用品は売れなくなりました。ゴルフは少年少女のスポーツでなく、おっさんの世界です。
50歳前後の男がゴルフを次々やめた理由が、児童の減少なわけはありません。そうではなく、バブルがはじけて起きた所得減でした。デフレ不況の賃下げが理由です。ゴルフはお金持ちのスポーツなので。
少子化の急進は、デフレ不況の所得減で結婚できない男女が増えたからです。婚姻はぜいたく品。
「子どもが減るから何もできない」と語り出す人は、原因と結果があべこべです。「まずは少子化を解決してからだ」の主張は、結果を変更して原因を動かそうとしています。
昭和になかった不吉な変化は、どれもデフレに起因します。
本が売れない原因と、路上テロが起きる原因は、同じ原因です。ブラック企業の大流行と、シェアハウスの流行も同じ原因。料亭の食材使い回しも、省庁の障がい者雇用不正も、新幹線の台車割れも、地方都市の洪水も。8つの原因は同一。ひとつの原因で8つとも起きた。
日本に山積みの問題はなく、ひとつの問題だけがあります。デフレです。
その平成デフレ不況はなぜ起きたのか。
1992年がバブル景気のピークで、中央政府の判断で不景気にかじを切りました。1995年秋の『Windows95』のOAブームで持ち直した日本の景気が、直後のある政策で墜落しました。それ以来デフレ不況が22年続きます。
それが1997年4月の緊縮財政と消費税増税でした。3パーセントから5パーセントに上げて、次の現象が起きました。(1)書店がつぶれた。(2)CD店がつぶれた。(3)パソコン店がつぶれた。(4)ファッション店がつぶれた。(5)商店街がシャッター通りに変わった。
5つの原因は、ネットの発達だとする誤解が非常に多いのです。特に(1)(2)で。
本やCDショップがバタバタつぶれたのは1998年です。その時日本の家庭にはパソコンはなく、遅れを嘆く声がワーワー出ていました。ネット先進の韓国にくらべ、日本のお粗末さは何だと。
だから2001年にインターネット博覧会を開いたではありませんか。
日本国民にパソコンとモデムを用意させ、インターネットに入門させる目的で。インパクを覚えていない方が多いのは、日本のネット人口が21世紀の初日にわずかだったからです。
ネットが閑古鳥の頃に、皆がネット文書を読み、音楽をダウンロードしたから、街の書店とCD店がつぶれたなどはあり得ません。本当の順序は、1997年の消費税増税で国民が貧しくなり、本代とCD代を節約した不買で店がつぶれるラッシュが起きたのです。
その頃の流行語は、能力給とリストラでした。給与報酬削減と解雇です。自殺激増3万人超の年。
バブル後の低調に消費税がとどめを刺し、全国民がいっせいに物を買わなくなり、不況になったのです。出費の削減。徹底した節約。
若者が草食化し、小粒に育った原因。それが消費税でした。因果関係は逆なのです。
誤解釈の指摘が、ひとつ増えました。
「日本が縮んだ原因は少子化でなく、消費税増税である」。
消費税への誤解はすさまじいの一言で、芸術の方が3.25倍は理解されているほどです。消費税について、著者は次の表現をよく使います。
・・・インフレは経済の夏。デフレは冬。夏の暑さで熱中症になる。冬の寒さでしもやけになる。
両方に即効性がある消費税。熱中症なら冷やす。それが増税。しもやけなら温める。それが減税。
インフレだと増税し、デフレだと減税する・・・
消費税は、上げ下げして景気を調節する弁です。0パーセントから始め、景気が過熱すれば3パー、5パーと上げ、超インフレが近いなら、40パー、100パーと上げて、理論上1兆パーも可能。
逆に景気が冷えれば2パー、0パーと下げます。それでもなお景気が落ちるなら、マイナス4パー、マイナス9パーと下げます。
マイナスの消費税だと、税抜き100円なら税込み96円や91円の割引セールになります。差額を国から店へ返します。その財源は政府の通貨発行権です。その時は必ずデフレだから、お金を追加出力して適度なインフレへ押し上げる道理に合います。そうしない思想こそが怪しい。
消費税はマイナス99パーセントからプラス無限大へ、上にも下にも対等に振動させて、インフレ率を2から4パーセントに保つ調整術です。
上げ下げが車のスピードと似ています。車もまた、決められたスピードにちょいプラスで走ります。スピードを上げて上げて、上げる一方の使用法とは違います(ドラッグレースを除く)。
3パーセントから5、8、10と上げて25パーセントを最終ゴールとする、そんなドラッグな思想は間違いです。上げたり下げたりが正解で、現にアメリカの各州はやっています。
日本に消費税が害悪なのは、スウェーデンなど北欧にくらべ人口がケタ違いに多い内需国だからです。ここまで皆さん、ついてこられましたか。
ところで、日本人は「総額一定論」が好きです。貯水池の水や炊飯器のごはんと同様に、決まった量のお金を皆で分ける誤った発想です。「財源論」「お金のプール論」「金本位制」「実物貨幣」「商品貨幣」「金属主義」の表現は、皆それです。金の延べ板との混同です。
この誤解釈には全体のパイを大きくして、皆の分け前を増やす発想がありません。「管理通貨制度」と「信用貨幣」の時代なのに、既存のお金をどう分けるかでもめる、具象感覚ですね。
子育て支援の代償で大学補助金をカットし、高校を無償にした犠牲で介護料を上げてと、ゼロサムゲームやシーソーゲームの共食いに終始する。A業界を助け、B業界を切り捨てる縮み思考なのです。
平成日本は、この共食いパニックの時代でした。他人を敵とみなし、自分が得するために他人に損させる生き方が流行りました。ギャンブル脳のこの人権侵害が、ブラックの正体です。
総額一定のお金を奪い合う、具象の感覚から出られない日本人の悲しい姿です。
予算、歳費、貨幣発行量、マネタリーベース、マネーストック、GDP、買う気、商品生産量、人口など各パラメーターはどれも固定せず、全てを計画的に増減できます。「右肩上がりは終わり、日本経済はもう伸びない」という声は、何かを固定した特殊な宗教にすぎません。
固定した数量は、子どもの人口ではありませんか。
神まかせのヤケクソな前途放棄か、コウノトリの迷信か。それとて、若い男女の所得が上がれば、婚姻率が上がり子どもが増えるだけの話です。
最近、消費税の廃止案が出ました。せめて5パーセントに戻そうという案も出ています。
5パーセント案には「本来必要だが今は下げろ」と言う財源論者と、「本来不要だが下げすぎるな」と言う物価安定論者がいます。しかし消費税にはメリットが何一つありません。
1989年の消費税導入時は3パーセントでした。代わりに元々5パーや30パーなど高い物品税を廃止して、高額商品が値下がりし大売れする成功でした。3ナンバー車の「シーマ現象」など、高級車や高級家電や高級カメラが飛ぶように売れた内需が、技術立国の基盤をつくりました。
後に中国や台湾や韓国にヘッドハントされ流出した生産技術は、この頃につちかったものでした。
だから3パーセントの数字がよさそうに思えますが、結局は害悪だけが残ります。
では、消費税廃止の公約を唱えた政党を、ポピュリズムだと皆が思ったのはなぜか。
国税財源論への信心もあったでしょう。が根底に、身を切る改革にいそしみ、皆で痛みを分かち合う逆境願望があった気がします。しもやけの手足を温める近道を嫌う、宗教的思想信条みたいなもの。もっと冷やそうとする。
何しろ物が売れなくて悩む中、もっと売れなくなる消費税増税への賛成が変に多かった。
虚無主義や奴隷根性とは違う、民族特有のマゾヒスティックな自虐性です。自己犠牲や自殺との親和性が、デフレ貧困に甘んじる苦境をあえて選ばせている疑いです。
財源論の勘違いとは別に、「日本だけ27年も経済低落するのは変だ」と思わない奇妙さです。
知識空白と自虐DNAの相乗効果で、悪い結果へ自ら向かう集団自決にみえるのです。
これは太平洋戦争(大東亜戦争)で、とことん身を切って痛みを極大化させた一連の行動と、多少は関係があると推測できます。
要は、愛する人を失って初めて目が覚める国民性です。間違いを一途に守るキャラ。
――デフレだと税収が減るから、消費税を増税すべきだろ?
デフレでは消費を増やす目的で、税率を逆に下げます。
――ならば、予算不足をどう埋める?
政府が国債を発行して円を新造し、政府が買い物します。
――ならば、国の借金が増えるが?
借金は政府赤字を指し、国民に与えたお金の別名です。
――もし返せなくなると、破綻するだろ?
自国通貨の国債なので、円の新造ですぐ返せます。
――ならば、なぜ今すぐ返さない?
自国通貨の政府負債は、毎年増やすべきものだからです。
――あえて減らせば何が起きる?
政府負債は貨幣発行額を意味し、赤字減らしはお金の削除です。
――しかし貨幣発行を無限に増やせば、ハイパーインフレになるぞ?
消費税を無限に増やせば、ハイパーデフレに落とせます。
――お金を国民に、直接ばらまくのはだめだろ?
お金が増えれば物が売れるので、国は経済成長します。
――既得権者が妨害するだろ?
その忖度で日本は経済縮小し、国力低下中です。
――税をとる分量の目安はどこにある?
デマンドプル型インフレ率が、2から4パーセントです。
――それをやっている国はどこだ?
日本以外の諸外国です。
――日本は外国と何が違う?
ひたすら逆走しています。
【ビジュアル資料】
(1)各国の最低賃金 (あの国と日本はどちらが高い?)
(2)各国の賃金の伸び (右肩下がりの国は世界にいくつ?)
(3)各国の企業の資産ランキング (日本企業は薄オレンジ色)
(4)各国の経済力と将来性 (上ほど強国、右ほど伸び盛り)
(5)消費税増税とGDP (97年と14年の増税に注目)
(6)無限に借金しても破綻しない日本 (お墨付きは誰の一言?)
(7)イングランド銀行の信用創造正論
(つづく)(2019年9月6日)